カスケードデザイン社およびそのブランドファミリーでは、私たちがアウトドア製品を生み出し、使っていくこの世界に対して、よりポジティブな影響を与えられるよう努めています。本レポートでは、これまでに実施してきた責任ある取り組みと、今後の方針を示しています。
私たちは、より良い素材の選定、安全な化学物質の使用、そして賢いパッケージングを通じて、製品・サプライヤー・事業活動が社会および環境に与える影響を最小限に抑えることを目指しています。
製品に使われる素材から、照明を何時まで点けておくかといった日々の選択に至るまで、すべての決断が環境にとって良くも悪くも影響を及ぼします。以下のページでは、私たちが優先課題と位置づけている取り組み分野について詳しくご紹介します。

PRODUCT DESIGN
高品質な素材と修理可能なデザインが、ギアの廃棄物化を防ぎます。

MATERIALS & CHEMICALS
責任ある素材の使用、安全な化学物質、制限された有害物質。

SUPPLY CHAIN
あらゆる工程とサプライヤーにおいて持続可能性を追求。

OUR CARBON FOOTPRINT
測定し、計画し、削減し、排除する:2050年までにネットゼロを目指す。
製品設計
耐久性・長寿命・修理可能な設計
私たちは、製品を長持ちするように設計し、アウトドア愛好家の冒険を支え、廃棄物の増加を抑えることを目指しています。
製品の耐久性
当社の最優先事項は、耐久性の高い長持ちする製品を設計・製造することです。社内およびフィールドでの徹底したテストにより、お客様が製品を使用する過酷な環境にも耐えられることを確認しています。実際に1980年代のMSRストーブや1970年代のTherm-a-Restマットレスを今も使用しているお客様からの声も多くいただいています。長く冒険を支える製品であるべきという信念から、当社の非電子製品すべてに対し限定的な生涯保証を提供しています。
製品のケアと修理
多くの製品は、お客様自身や修理工房のスタッフによって修理が可能です。これにより、製品を長くフィールドで使用し、廃棄物を減らすことができます。また、修理チームはお客様が自分で修理できるよう、マットレスに付属する修理キットやサービスキットを通じて知識を共有しています。
当社の修理・サービスチームは50年以上の経験を持ち、『Outside Magazine』にも紹介されました。彼らの創意工夫と技術力により、多くの製品が修理されてお客様に長く使われ続けています。2021年12月17日時点で、修理工房では5ブランド全体で受け取った商品の約60%が修理されています。修理の記録は製品チームにフィードバックされ、今後の設計に活かされています。このフィードバックは耐久性基準の策定や、フィールド・ラボでの厳しい製品テストにも反映されています。
使用終了後とリサイクル
多くの製品は耐久性のある素材(リサイクル可能な素材も多い)で作られ、何十年も使われている製品もありますが、製品寿命の終わりにどうなるかも重要視しています。今後もリサイクル材やアップサイクル材を使った製品・包装材の開発に注力し、年々増やしていく計画です。廃棄されたナイロンやポリエステル、フォームのリサイクル業者を見つけることや、使用済み製品の廃棄物処理戦略の構築にも取り組んでいます。さらに、リサイクルが容易なナイロンやポリエステルの優先材料方針も策定予定です。
製品素材と化学物質
製品素材と化学物質の選定
持続可能な素材を選ぶことは、自然環境を大切に守り、未来の世代に誇れる遺産を残すために欠かせません。当社では素材に関する規制や企業としての環境目標を遵守するため、制限物質リスト(Restricted Substance List)を整備しています。これらを踏まえ、新製品に最適な素材を追求するとともに、既存製品に使用されている繊維素材の改善にも常に取り組んでいます。
素材
当社ブランドには、すでにリサイクル可能な製品や環境に優しい素材を使い、化学物質や有害物質を制限した製品が多数あります。耐久性があり持続可能な素材を用いた製品をさらに増やすことにコミットしています。
MSRのウォーターストレージシステムは、健康被害との関連が指摘されているプラスチック添加物のBPA、BPS、フタル酸エステルを一切使用していません。
ストーブ、テント、浄水装置、クッカー、スノーシューはリサイクルが容易な部品を使用しています。
また、睡眠用具の素材調達においては、Responsible Down Standardなどの認証機関やNikwaxのようなサプライヤーと連携し、より良く持続可能な素材を追求しています。
化学物質
当社は製品に含まれる難燃剤(Flame Retardants:FR)に関するお客様の関心を重視し、アウトドア業界団体(Outdoor Industry Association:OIA)の化学物質管理ワーキンググループ(Chemical Management Working Group:CMWG)に積極的に参加しています。チームは難燃剤タスクフォースにも関わり、OIAメンバーや規制機関、一般への情報発信に努めています。
当社の目標は、化学物質管理のデータベースと戦略を構築し、2030年までにソフトグッズ製品の100%をBLUESIGN®基準に適合させることです。また、2030年までにソフトグッズ製品で使用されるDWR(耐久性撥水加工)をすべて非PFC(有害なパーフルオロ化合物不使用)にすることを目指しています。
制限物質リスト(Restricted Substance Lists)
BLUESIGN®やOEKO-TEXと連携して開発された制限物質リストは、有害な物質からお客様、従業員、環境を守るために役立っています。サプライヤーには当社の制限化学物質リストの遵守を求め、監査によって確認を行っています。制限物質リストは新たな毒性研究や規制動向に応じて常に更新されています。
サプライチェーンと製造への責任ある取り組み
私たちは、製品の多くを自社工場で製造し、地域のサプライヤーと連携することで、品質管理と環境への影響を高いレベルでコントロールしています。また、すべてのサプライパートナーや施設の運用を綿密にモニタリングし、効率性を最大化しながら、地球への負荷を最小限に抑えることを目指しています。
輸送においても無駄を省き、必要なものを必要なだけ届けることを徹底。空輸を管理・記録し、コンテナの積載効率を最大限に高めるプログラムを導入しています。
サプライヤーの追跡と責任
持続可能な製造は、シアトル・リノ・アイルランドの自社工場にとどまりません。素材の供給元まで含め、社会的・経済的・環境的な影響に配慮した責任ある製造を重視しています。
そのため、私たちは「サプライヤー行動規範(Supplier Code of Conduct)」を定め、すべてのパートナーに遵守を求めています。多くのサプライヤーが、この基準を上回る取り組みを自主的に行っています。
持続可能な自社工場運営
MSRの自社製造拠点(米国シアトル・ネバダ州リノ・アイルランド・コーク)は、厳格な水質・廃棄物管理の基準を遵守しています。
特にシアトル工場では、以下の規制を含む複数の環境・労働・化学物質に関する法規制に準拠しています:
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米国運輸省(DOT)危険物輸送規制
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米国環境保護庁(EPA)廃棄物処理および水質保護法
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米国労働安全衛生規則(OSHA)
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グローバル化学物質分類・表示制度(GHS)
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ワシントン州およびキング郡・シアトル市の地域環境法規 など
カーボンフットプリント行動計画
Cascade Designsは、気候中立に向けて着実に前進しています。
自然のなかでの冒険と同じように、気候変動への取り組みにも知識と計画、そして信頼できるパートナーが欠かせません。
1. 知識(Knowledge)
私たちは「Change Climate Project」のBEEツール(Brand Emissions Estimate)を用いて、自社の温室効果ガス(GHG)排出量を推定しています。このツールは、国際的な「温室効果ガスプロトコル」に準拠し、製品の生産額に基づいた信頼性の高いデータを活用しています。
2023年の推定GHG排出量は 40,203トンのCO₂換算。
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1,413トン(スコープ1):自社車両の燃料燃焼などによる直接排出
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762トン(スコープ2):購入した電力などによる間接排出
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38,068トン(スコープ3):原材料の調達や製品輸送、通勤、出張など、その他すべての間接排出
2. 計画(Planning)
この排出量データをもとに、気候影響を最も効果的に削減できる事業領域を特定し、優先的に取り組んでいます。
当社の目標は、「Science Based Targets Initiative(SBTi)」の基準に沿った温室効果ガス削減です。SBTiは、気温上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に抑えるための科学的な削減目標です。
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2030年までに2021年比で45%のGHG削減
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2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指します
3. パートナーシップ(Partnership)
製品開発段階で環境負荷を評価し、自社設備やサプライチェーンにおいても、低炭素な素材とプロセスの導入を進めています。エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの活用も積極的に推進しています。
また、Outdoor Industry Associationの「Climate Action Corps」に加盟し、アウトドア業界全体でのネットワークと知見を活かしながら、自然環境の保護に向けて取り組んでいます。
Proposition 65について
Proposition 65とは何ですか?
1986年にカリフォルニア州の有権者によって可決された「安全な飲料水および有害物質施行法(Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act)」の通称です。
この法律の目的は、発がん性、先天性欠損症、または生殖に有害な化学物質への曝露について、消費者が正しい判断を下せるように情報提供することにあります。
なぜ当社の製品に Proposition 65 の警告ラベルが貼られているのですか?
カリフォルニア州内で事業を行う、または製品を販売する従業員10人以上の企業は、Proposition 65への対応が義務付けられています。
企業には以下の2つの義務があります:
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有害化学物質を飲料水源に排出しないこと
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有害化学物質への曝露の可能性がある場合、「明確かつ合理的な」警告を表示すること
当社(Cascade Designs)は、製品に含まれる1つまたはそれ以上の「リスト掲載化学物質」が存在する可能性があることから、曝露レベルを評価せずに、予防的な措置として警告表示を行っています。これは、「リスクが高い」という意味ではなく、安全性への配慮に基づいた判断です。
Proposition 65の警告がある製品は危険ですか?
いいえ。カリフォルニア州政府は以下のように説明しています:
「Proposition 65の警告があるからといって、その製品が危険だというわけではありません。」
「この法律は、製品の安全性を直接規制するものというよりも、“知る権利”を保障する法律です。」
警告は、製品にリスト掲載化学物質が含まれていることを示します。法律上、曝露レベルが「無視できるリスク水準(No Significant Risk Level)」を下回っていると企業が証明できない限り、警告表示が義務付けられます。
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発がん性物質の場合: 毎日70年間曝露されても、10万人あたり1人以上のがん発症リスクが増加しないレベル。
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生殖毒性物質の場合: 「無影響レベル(No Observable Effect Level)」を1000分の1にした量で、リスクがないとされます。
具体例
MSRの一部のストーブには真鍮(しんちゅう)が使われています。真鍮自体は有害ではありませんが、微量の鉛が含まれており、摩耗や破損によって表面に露出する可能性があります。
当社では、この鉛の含有量が法的な「無視できるリスク」レベル以下であることを認識していますが、慎重を期して警告表示を行っています。
Proposition 65リストにはどんな化学物質が含まれていますか?
このリストは、カリフォルニア州知事が維持・更新しているもので、毎年見直されています。
含まれる物質の例:
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農薬、家庭用品、食品、薬品、染料、溶剤の添加物や成分
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製造や建設業で使用される物質
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化学反応の副産物など
以下の「権威ある機関」によって有害性が認定された物質が対象になります:
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米国環境保護庁(EPA)
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米国食品医薬品局(FDA)
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米国労働安全衛生研究所(NIOSH)
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国立毒性プログラム(NTP)
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国際がん研究機関(IARC)
詳細は以下の州公式サイトをご参照ください:
フッ素・PFAS(永遠の化学物質)について
PFASとは何ですか?
PFAS(ピーファス)・フは、「ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(per- and poly-fluoroalkyl substances)」の略で、数千種類もの化合物からなる化学物質群で、日本では一般的にフッ素と呼ばれてきました。1940年代後半からさまざまな消費財に使用されており、特に耐熱性、耐油性、防汚性、防水性を持つコーティング剤として広く使われてきました。これらの化学物質は自然環境中で分解されず、土壌・水・空気を長期間汚染し続けるため、「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」と呼ばれています。
なぜカスケードデザイン社(MSRの親会社)はPFASを使用していたのですか?
PFASは、非常に高い耐久性と撥水性を備えたコーティングを実現できるため、これまで多くの製品で選ばれてきました。当初はその環境や健康への影響が十分に知られておらず、アウトドア業界全体でも、製品性能を最優先して材料や加工方法を選定していました。以前は、高性能な撥水コーティングの多くにPFASが含まれていたのが実情です。
PFASの健康リスクについて心配すべきですか?また、どうすればよいですか?
PFASが健康に与える影響については、現在も研究が進められています。さまざまな健康問題との関連が指摘されていますが、科学的に完全に解明されているわけではありません。ご心配な方は、医師などの専門家にご相談されることをおすすめします。
カスケードデザイン社はPFASに対してどのような対応をしていますか?
当社では、製品ライン全体をPFASフリーに移行する取り組みを進めています。
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一部の製品は、PFASを使わずに性能を維持することが難しいため、今後ラインアップから外れる予定です。
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多くの製品では、PFASを含まない撥水加工(DWR)に切り替えています。
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スタッフサックや収納袋など、部品レベルでPFASが使われていた製品についても、順次PFASフリーの素材へと更新していきます。
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新製品はすべてPFASを含まない素材で開発されています。
PFASが含まれているかどうかはどこで確認できますか?
新製品はすべてPFASフリーで設計されており、既存製品も順次切り替え中です。製品の「テックスペック(仕様)」欄に記載されている「素材」や「ファブリック」の項目に、PFASの使用有無が明記されている場合がありますので、ご確認ください。
カスケードデザイン社は製品に使用している化学物質の一覧を公開していますか?
化学物質に関する情報や当社の方針については、カスケードデザイン社の公式ウェブサイトをご覧ください。
PFASについてもっと詳しく知りたいのですが?
PFASのより詳しい情報は、アメリカ環境保護庁(EPA)の特設ページをご覧ください。
サステナビリティのためのパートナー
